Lab SCOPE 2017 Vol. 53

撮影場所：和歌山県白浜町 番所の崎

南紀白浜の西端、番所の崎。岩礁に囲まれたこの岬は、太平洋に面した外海なのに、波も穏やかで、どこか南の島を思わせる静かなところです。地図で見ると釣り針の形をした湾になっていて、奥には小さな入り江や島があり、沖に見える養殖場から舟のエンジン音が心地よく聞こえてきます。
日が沈むにつれ風が止んできました。白い砂浜の波打ち際、波をよけ岩を伝って行くと一面に潮だまりが広がります。夕暮れの空の色が、浸食した岩の影と水面に美しく光り、ゆったりと流れる時間に、しばらく身をゆだねます。
日が沈み、星が光りはじめる頃、ちょろちょろと静かな音を立てて、鏡のような水面が動き出します。潮が満ちてきました。
干潮の時にだけ見える美しい時間は、静かにこの岬に流れています。

撮影日 2016.7.13（撮影・文 大倉孝敏）